感染症 Infection
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症
猫白血病ウイルス感染症とは、猫白血病ウイルス(FeLV)が原因となる猫の感染症です。胎盤を介しての胎児への感染では80%以上が死産や流産となります。伝搬は主に感染猫の分泌物を介して感染することにより成立します。母乳を介して子猫への感染も起こります。グルーミングやトイレや食器の共有などによっても感染は成立しますが、これには濃厚な長期にわたる接触を必要とします。一方、咬傷からの感染は大量のウイルスが直接体内に注入されるため非常に効率良く感染が成立し、1回の咬傷のみで感染する可能性があります。
症状
初期感染期と持続感染期で病態は異なります。初期感染期は感染後2〜6週目に始まり、1〜16週持続します。全身のリンパ節腫大、発熱、好中球減少症、血小板減少症、貧血などがみられます。
持続感染によって引き起こされる疾患には、ウイルスが直接的に関与にして発症している疾患とウイルス感染が引き起こす免疫不全や免疫異常に関連して二次的に発症する疾患があります。直接作用によるものには造血器腫瘍(リンパ腫、リンパ性および骨髄性急性白血病、骨髄異形成白血病)、再生不良性貧血、赤芽球癆、流産、脳神経疾患などがあります。FeLV感染症のうち造血器腫瘍の占める割合は約20%です。二次的に発症するもののうち免疫異常に関連するものには免疫介在性溶血性貧血(IMHA)などの免疫介在性疾患や糸球体腎炎などがあります。
治療
持続感染期の治療は、それぞれの疾患に対する治療を行います。FeLV感染症の予後は疾患により異なりますが、ウイルスの直接作用による疾患の方が間接作用による疾患に比べて予後は悪い傾向があります。
われわれが過去におこなった調査では発症後3ヵ月の生存率は60%、1年生存率は50%、2年生存率は35%、3年生存率は12%でした。また、感染後2年で63%、3年半で83%が死亡するというデータもあります。
猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症
FIVの主な感染経路は喧嘩等による咬傷で、FIV感染に伴う何らかの臨床症状を呈している猫や、口腔内に病変を有する猫からは感染が成立する可能性が高いと考えられています。FeLVと異なり授乳やグルーミング、食器の共有などの経口感染は起こりません。平均発症年齢はFeLVより高く5〜6歳である。雄猫は雌猫の2倍以上感染率が高く、特に去勢をしていない猫に発生が多い傾向にあります。
FIV感染症は臨床症状に基づき、急性期、無症候キャリアー期、持続性リンパ節腫大期、エイズ関連症候群(ARC)期および後天性免疫不全症候群(AIDS)期の5つの病期に分類されます。一般に感染後約4週間で抗体の陽転が見られます。
症状
AP期では発熱や、リンパ節腫大、白血球減少症、貧血、下痢などが見られます。ARC期では免疫異常にともなう症状が現れ、主なものには口内炎や歯肉炎、上部気道炎、消化器症状、皮膚病変、糸球体腎炎、前部ブドウ膜炎などが挙げられます。AIDS期ではいわゆる免疫不全に関連する症状を呈します。これにはクリプトコッカス症、カンジダ症、ヘモプラズマ症、毛包虫症といった各種の日和見感染症や、貧血あるいは汎血球減少症、神経症状(脳炎)、腫瘍などがあります。
治療
FIV感染猫の治療は、ウイルスに対する原因治療よりむしろ発症している疾患あるいは症状に対する対症治療が中心となります。免疫不全に伴う二次感染の管理や、FIV感染による免疫異常(過剰免疫反応)にともなって生じる病変に対して治療を行が行われます。口内炎や歯肉炎は非特異的なリンパ球の活性化が関与していると考えられているため、ステロイド剤の投与と二次感染防止のための抗生物質の投与が行われます。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
SFTSはウイルスを持ったマダニに咬まれることにより感染する人の病気と当初考えられていました。しかしその後猫と犬それにチーターでの発症例が見つかり、人獣共通感染症と認識されるようになりました。犬は感染しても発症しにくいようですが、猫はかなりの確率で発症するようです。猫ではマダニからの感染以外に発症した猫からも感染することがあります。また、発症した猫から人への感染も報告されています。猫での発生は今のところほとんどが西日本に限られていますがウイルスは全国で確認されており、今後全国で発生することが考えられています。
症状
ヒトとほぼ同じ症状であると考えられ、元気・食欲消失(100%), 黄疸(95%), 発熱(78%), 嘔吐(61%)などが認められます。ネコでは黄疸が多いこと, 下痢が少ないことがヒトと異なる臨床症状と考えられています。致命率は人に比べて非常に高く、約60%の猫は死亡します。
治療
飼主様への感染の危険があるため、必ず入院して完全に隔離して治療を行います。確立した治療法はなく、対症療法になります。エビデンスはありませんが当院ではインターフェロンの連日投与により良い成績を得ています。退院は2回連続してPCR検査で血液と肛門周囲や唾液からウイルス遺伝子が確認できなかった場合になります。
エキゾチックアニマル
フィラリア症(フェレット)
犬の病気としてよく知られているフィラリア症ですが、フェレットにも感染します。
寄生すると治療は困難であるため、月に1回の予防薬を欠かさず投薬することをおすすめします。