神経疾患 Neurological disorder
特発性前庭障害
耳の奥にある前庭とよばれる部位に障害がおきて発症する病気です。高齢の日本犬に起こりやすい傾向があります。
症状
目が揺れて(眼振)、首が曲がり(捻転斜頸)、正しい姿勢を保てずにぐるぐる回転してしまうこともあります。何かに取り憑かれたのではないか、緊急疾患だ、と慌てて来院されることもあります。
診断
身体検査や神経学的検査、血液検査にて他の疾患による症状でないか確認します。特に耳の病気(内耳炎)による前庭障害もよくみられるので、耳道のチェックはも含めてしっかりとチェックを行います。
治療
食欲があるようなら経過観察を行います。通常は1〜2週間程度で改善がみられますが、うまく食べれずに何日も過ごしてしまうと具合が悪くなるので、適切な補助治療が必要となります。
てんかん
てんかんとはてんかん発作を起こす脳の慢性疾患のことです。てんかん発作とは頭の中の特定の場所で起こる異常な興奮によって、引き起こされる発作などの症状のことをいいます。2015年に国際獣医てんかん特別委員会(IVETF)からガイドラインが発表されて、分類や用語が統一されましたのでここではその用語を用いて説明していきます(潜因性てんかん、症候性てんかん、部分発作などの用語は用いないようにします)。
てんかんには原因によって特発性てんかん、構造的てんかん、反応性てんかんと3つに分類されます。ホルモン異常を含めた内蔵の病気や(代謝障害)さまざまな毒性物質を摂取したこと(中毒)を原因とするものを反応性発作といいます。また脳腫瘍や脳炎など脳の構造的変化を伴っているものを構造的てんかんといいます。
症状
てんかん発作がみられます。この“てんかん発作”という症状がくせ者で実は心臓の病気だったなど、そもそも発作じゃないものや、発作に見えないけどてんかん発作だったということもよくあります。今は多くの方がスマートフォンなどで動画を撮影することが可能となっていますので、わんちゃんやねこちゃんの様子で不安に感じることがあれば動画を撮って相談してもらうことをお勧めします。
診断
構造的てんかんや反応性てんかんは問診、身体検査、神経学的検査、血液検査、レントゲンや超音波検査を駆使して診断していきます。構造的てんかんの一部にはCTやMRIなど、より専門的な検査が必要になる場合があります。
中年齢で比較的よく遭遇する特発性てんかんは反応性てんかんと構造的てんかんが否定されることで診断(除外診断)されます。
治療
反応性てんかんや構造的てんかんは原因によって治療方法はさまざまです。特発性てんかんでは主に抗てんかん薬を飲ませることで治療を行っています。
治療開始となる発作の頻度はいつ?
以前は1ヶ月に1回程度といわれることが多かったですが、現在は6ヶ月に2回以上の発作が開始のタイミングとされています。その他1日の間に複数回出る場合や1回の発作が5分以上続く場合、また構造的てんかんと診断された場合などは治療スタートとなる場合があります。
椎間板ヘルニア
脊椎間に存在しクッション機能を果たす椎間板が、本来の場所から移動してしまうことで種々の症状を呈すものを椎間板ヘルニアと呼びます。
症状
背中や首の痛み、フラツキ、立てない、麻痺などが起こることがあります。
診断
まず身体検査や神経学的検査、レントゲン検査などが実施されます。確定診断にはCTやMRI検査が必要になることもあります。ヘルニアの症状にみえて、全然違ったというケースもよく遭遇します。安易にお家で判断せずに、しっかりと診てもらうことをおすすめします。
治療
重症度によりますが安静などの保存療法の他、手術が実施されることもあります。手術では背骨(椎骨)を削って窓を開けて神経を圧迫している椎間板物質を除去します。また窓を開けること自体が神経にかかっている圧迫を解除する(減圧)効果もあります。