腫瘍疾患 Tumor disease
乳腺腫瘍
乳腺は、左右の乳頭に沿って存在する乳汁を分泌する分泌組織で、乳腺腫瘍はこの乳腺組織が腫瘍化することで起こる病気です。中高齢の女の子に多く認められる腫瘍です。発症の要因として、女性ホルモンやその他のホルモン、遺伝的体質などの影響があるといわれています。避妊していない中高齢以上の女の子で発症率が高いことが知られており、犬では、初めての発情の前に避妊手術を行うと乳腺腫瘍になる確率が非常に低くなるといわれています。猫がかかる腫瘍の中では3 番目に多い腫瘍で、犬と比べて悪性腫瘍の可能性が高いことで知られています
症状
乳腺組織に「しこり」ができます。胸や脇の下、下腹部、内股までの乳腺に複数ヶ所できる場合もあり、悪性腫瘍の場合は腫瘍の増殖とともに皮膚が破け出血や壊死を起こしたり、リンパ節や肺や肝臓などの他の組織に転移する場合があります。
治療
外科的に腫瘍を手術で摘出します。早期発見、早期摘出が重要となります。良性腫瘍では、早期摘出で経過が良好な場合が多いですが、悪性腫瘍では、摘出しても再発や他の組織に転移をすることがあり、経過が悪い場合もあります。手術で摘出する治療以外に、抗がん剤治療や放射線治療を行なうこともあり、またそれらの治療を手術と組み合わせて行なう場合もあります。
犬の肥満細胞腫
肥満細胞腫は、肥満細胞という細胞が腫瘍化する悪性腫瘍です。発症の原因ははっきりわかっていませんが、高齢の犬に多く発症する傾向があります。
症状
肥満細胞腫の悪性度やできた場所によって症状は異なります。主として皮膚に発生する場合が多く、その場合皮膚にしこりや潰瘍のような病変ができ、その部分に脱毛や炎症などが伴うことがあります。多発性に発症することが多く、外見上皮膚病に似ている場合もあります。体内に腫瘍ができた場合は、できた部位にもよりますが、嘔吐や下痢、食欲不振などの症状を引き起こすことがあります。肥満細胞腫は転移することも多く、様々な症状を引き起こし死にいたることもあります。
治療
肥満細胞腫の悪性度やできている部分、転移があるかどうかによって治療は異なってきます。
悪性度が低く、転移がない場合には、転移や再発を予防するために腫瘍周辺の正常組織ごと外科的に摘出します。悪性度が高く転移などがあり摘出が難しい場合には、抗がん剤やステロイド剤を投与する化学療法を行ったり、放射線療法を行ったりしますが、完治は難しいといわれています。
猫のリンパ腫
リンパ腫は血液中にある白血球の一つであるリンパ球が腫瘍化する血液の癌の一種です。病変の位置により「多中心型リンパ腫」「消化器型リンパ腫」「縦隔型リンパ腫」「皮膚リンパ腫」などに分けられていますが、中でも猫におけるリンパ腫の発症は、若い猫に発生が多い「縦隔型リンパ腫」と老齢の猫に多い「消化器型リンパ腫」が主となります。発症の原因ははっきりしていませんが、発症の一要因として猫白血病ウィルス(FeLV)の感染があるといわれています。その他、免疫力の低下やストレス、遺伝等様々な要因が重なり発症するといわれています。
症状
「消化器型リンパ腫」では、多くの場合難治性の下痢や嘔吐などの消化器症状がみられます。また、「縦隔型リンパ腫」では胸水がたまることも多く、咳や呼吸困難などの呼吸器症状がみられるのが一般的です。リンパ腫は重度になると上記のような症状以外にも、食欲不振、削痩など様々な症状を引き起こします。
犬のリンパ腫
犬の場合、体のリンパ節に腫れがみられる「多中心型リンパ腫」が一番多く、リンパ腫全体の 80 %以上を占めるといわれています。また、6歳以上の高齢の犬に発症が多いとされています。発症の原因ははっきりわかっていませんが、一定の犬種に発症が多くみられる傾向があり、遺伝的な関与も要因としてあげられています。
症状
「多中心型リンパ腫」では顎、脇の下、内股、膝の裏側などにある体表リンパ節の腫れが一般的です。その他、「消化器型リンパ腫」では下痢や嘔吐などの消化器症状がみられ、「縦隔型リンパ腫」では咳や呼吸困難などの呼吸器症状、「皮膚型リンパ腫」には皮膚に湿疹や脱毛などの症状がみられます。リンパ腫は重度になると上記のような症状以外にも、食欲不振、削痩など様々な症状を引き起こします。
治療
一般的にリンパ腫の治療は抗がん剤の投与となります。抗がん剤治療の効果により、犬は確実に延命ができ、症状が一定期間消失してより良い生活を送ることができます。(この状態を寛解状態といいます。)しかしながら、種類にもよりますが、抗がん剤には嘔吐や下痢、食欲不振、血球の減少などの副作用があります。このような副作用を伴うため、抗がん剤の治療を行うかどうか、またどの抗がん剤を用いるかについては慎重に判断する必要があります。がんの進行状態によっては治療や延命への効果も異なるため、その子に合わせた治療が必要です。